園長室

キリンがいない

ありし日のタミオです
 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
 お正月、いつもの通り、動物たちに新年のご挨拶をしに事務所を出たのですが、すぐに私を見つけて寄ってくるタミオの姿はありません。やはり、動物園にとってキリンの存在は大きいものだなあと改めて実感しました。

 ご存じのように、旭山動物園のキリン「タミオ」は平成16年8月18日、満21歳で亡くなりました。あれから1年以上経っているのに、なぜ未だに喪中のプレートを出しているのだろうと思われている人も多いと思います。
 実は、タミオがいなくなってすぐに、ある動物園から1歳のキリン(オス)が旭山動物園に17年の4月には移籍することになっていました。後はメスのキリンを探してペアにすればよいと私は安心していたのです。ところが、3月の末になって、オスキリンのいた動物園から連絡があり、「予定していたキリンが急死した」というのです。さらに困ったことに、メスのキリンも当てが外れてしまい、とうとう平成17年度はキリンのいない年になってしまいました。
 キリンは、いわゆる希少動物ではありません。どちらかというと動物園にとって普通の動物なのです。過去には旭山動物園でも繁殖していましたし、どこの動物園でも親子のキリンが人気者となっていました。特に多摩動物公園ではキリンを群れで飼育し、繁殖も良好で、日本中の動物園が「キリンは多摩に頼めば何とかなる」と思っていました。その多摩で、繁殖に関与していたオスが死亡し、ここ数年間、繁殖が止まってしまったのです。

 ところで、亜種をご存じでしょうか。同じキリンでも、日本には、アミメキリン、マサイキリン、ケープキリンの3亜種がいます。それらの亜種を“混血させないで繁殖させていきましょう”というのが日本動物園水族館協会・種の保存委員会の考え方です。旭山動物園のタミオは、その亜種が不明であったため、マーナが亡くなった後、次のメスを旭山動物園に入れることができませんでした。
 では、次に旭山動物園が飼育するキリンはどの亜種が良いのでしょう。その時点で、アミメキリンは42園で130頭近く飼育されていましたが、マサイキリンは10園で30頭前後しかいませんでした。よって、新たに繁殖ペアを導入するには、アミメキリンが良いと判断したのです。手に入りやすいでしょうし、旭山で繁殖してももらい手がすぐに見つかるものと期待できるからです。
 ところが、多摩でも繁殖がなく、他の動物園でもどんどん生まれると言うことでもありません。キリンは大型動物で、飼育スペースの問題もあり、それぞれの動物園で飼育できる頭数が限られていますから、ある程度計画的な繁殖をさせる必要があります。一方で、繁殖できない動物園では、いざというときになかなか手に入らないという事態に陥ってしまいます。実際に03年に繁殖したキリンは19頭で死亡は32頭でした。現実にキリンの頭数は減少しているのです。
カバは産児制限している動物でしたが,今後はしっかりした繁殖計画が必要です
 では、外国から輸入すれば・・・と考えられるでしょうが、輸送コストの問題ばかりでなく、病原菌を日本に持ち込ませないために、偶蹄類であるキリンは厳重な検疫を受けなければならないので、輸入はそう簡単なことではありません。つまり、日本の動物園は、現在国内で生存している動物たちを大切に育て、計画的に繁殖させて外国の動物園に頼ることなく、動物園動物を確保していかなければならないのです。

 これまで、動物園では“希少動物の種の保存を大きな目標としてやっていきます”と宣言し、世界中の動物園が協力して、多くの努力を積み重ね、成果も挙げてきました。もちろん、そのことは非常に重要なことなのですが、いわゆる普通の動物たちも国内の動物園が協力して確保していかなければ、動物園で飼育する動物がいなくなってしまうことになってしまうのも現実です。希少動物だけが貴重なのではなく、野生動物すべてが貴重なのですから、これからはキリンやカバ、ライオンといった、いわゆる普通の動物たちも国内の動物園が協力して計画的に繁殖させる努力をしていかねばなりません。

 おかげさまで、某動物園でアミメキリンが繁殖し、その子を旭山動物園へ迎えるべく、協力をお願いしている所です。今年の春には無事、キリンのこどもがやってくることを私と一緒に祈っていて下さい。
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