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クリスの悲報 (平成21年2月8日)

 オオカミの雌クリスが2月7日朝死亡していました。頸部に咬傷があり床には血痕がありました。解剖の結果、頸部には牙が貫通した傷が多数あり、出血した血液が肺に入り窒息により死亡したことが確認されました。一方的にやられた状態で、他の2頭、ケンとメリーには争った傷跡もなく何事もなかったかのように平然としていました。
 当園でのオオカミの飼育の目標は、ゲンちゃん日記平成20年5月オオカミらしくを目指してを参照してください。

 
ゲンちゃん日記:オオカミらしくを目指して

 クリスは当初から人に対する依存度が高く、担当者や飼育係を見つけると甘えた声を出し檻越しにすり寄ってきました。  前飼育地でも群れのリーダーを追われた個体とだけ同居が可能で、常に最下位の個体でした。「オオカミの森」がオープンした当初、オオカミ同士での行動を見ていると、明らかに相手がいやがっているのにまとわりついたり、間が読めない行動が頻繁に見られました。下手に出て甘えるしぐさをしたり、3頭の中に餌を入れるとクリスが食べていてもケンやメリーが唸るとあっさりと餌を手放す状態でした。ケンとメリーは一歳になったばっかりでまだ精神的に成獣ではありません。体格では負けていたのですが、精神的な部分で特にメリーに対して優位な地位を保ってほしいと見守ってきました。秋になり運動量も増えクリスの体格は明らかに逞しくなってきました。前足の跛行も目立たなくなってきました。遠吠えもしっかりとするようになりました。甘えるようなしつこい行動は見られるのですが、決して下手に出るだけではなく時には唸られると唸り返したりもするようになってきました。ケンが明らかに優位でクリスとメリーの関係は微妙な状態でした。ただケンはメリーと行動を共にする場合が多く見られてはいました。これはメリーにとってはとても優位な条件になります。

 冬になり年が明け、クリスに発情の兆候が見られました。陰部に軽い発情出血が認められるようになりました。クリスの行動は特にケンに対して積極的になり始めました。ケンとメリーが並んでいると間に割って入ったり、メリーを牽制したりするようになりました。ケンも積極的とまではいえませんが、クリスの匂いをかいだり、追尾するような行動も見られました。遠吠えも3頭同じ場所ですることが多くなりました。メリーには発情の兆候は見られていなかったので、この状態ならば当初の目標通りケンとクリスでの繁殖が達成できるのではないかと思われていた矢先の出来事でした。

 クリスとメリーの上下関係や、ケンとの関係がはっきりとしないまま、クリスに発情が来てしまったことが今回の出来事の原因だと思われます。ケンが伴侶としてクリスを第一位の雌と認めていたならば今回の事件は起きなかったはずです。ケンなのかメリーなのか発情の来たクリスを排除しようとする感情が強く働いてしまったと思われます。咬傷は頸部のみに集中していたのでケンとメリーのどちらか一頭による攻撃だったと思われます。前日夕方まで放飼場では死に至る攻撃を受ける兆候は認められていなかったので、寝室内で攻撃を誘発してしまう何かが起きたのでしょう。

 体格も逞しくなり、僕が檻越しで見ていても甘えるしぐさを見せなくなりオオカミとしての自覚が確実に育って来ていたのですが残念な結果となってしまいました。ケンとメリーは兄弟なのでこの2頭でのペアーの形成は避けなければいけません。  旭山での将来の計画は抜本的に見直さなければならない状態になりました。