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フラミンゴ脱走の経過 (平成24年9月)

 7月18日、旭山のフラミンゴが脱走しました。旭川近郊の止水域にいると考え捜索をしましたが発見できず、目撃情報もなく生存の可能性が低くなったと考えていましたが、フラミンゴは一週間後に小樽市の銭函で発見されました。海岸の埋め立て地にできた小さなため池でした。菜食行動、排糞は認められましたが、衰弱を予想し一刻も早い捕獲を目指し発見の翌日の夜間捕獲を試みました。衰弱していれば追いかけることで飛翔力が落ち、捕獲できるのではないかと考えました。捕獲作戦を朝まで続けましたが衰弱どころか、フラミンゴは銭函を放棄しその日の午後に紋別市で発見の報が入りました。

 紋別市で落ち着いたのがコムケ湖で、フラミンゴが生活できる条件を満たしていましたが、アオサギなど鳥類も捕食する、オジロワシやキタキツネが暮らしていまいす。早期捕獲を最優先として、群れる習性を利用し、旭山で一緒に暮らしていた仲間のフラミンゴを連れて行く方法で捕獲作戦を2回行いました。
 湖では行動を共にしているアオサギは、夜になると大半が森に帰ります。銭函での観察でフラミンゴは夜間でも活動をしていることが分かっていたので、夜間に逃げたフラミンゴが寄ってくるのではないかと考え、夜間も仲間をおりに入れておきました。

 1回目は、仲間に近づいたフラミンゴを水中に仕掛けた網に絡めて捕獲する作戦でした。仲間のフラミンゴの檻は岸に近い浅瀬の水中に置きました。フラミンゴが網に絡まった場合、転倒しておぼれてしまう危険が高いため、すぐに駆けつけられるように岸に近い場所を選びました。夜間は仲間の安全確保のため、観察と、2時間おきの見回りを行いました。
 その結果、キタキツネやミンクが近寄ること、近寄った痕跡は認められませんでした。捕獲作戦自体は、仲間には近づくのですが、仕掛けた網の存在に気づいたと思われる行動を取り捕獲できませんでした。
 2回目は、遠くからリモコンで発射できる網を仕掛けました。フラミンゴは仲間と鳴き交わしはするのですが近寄ることはありませんでした。仲間の出現と同時にたくさんの人間が現れるため、フラミンゴの警戒心が高まっていることが懸念されました。夜間は報道関係者に現場を離れてもらい、観察・見回りを行いました。午後10時半までは異常はなく、午前0時の見回り時に、一羽の死体と一羽の翼の一部を発見する事態となってしまいました。多くの方の心を痛める結果となってしまったこと深くお詫びいたします。

 翌日も捕獲作戦は継続しましたが、紋別市を始め多くの方々の協力で捕獲を試みることができたのですが、結果を出すことができませんでした。

 生き物を飼育する旭山動物園は、飼育している生き物は最後まで飼育しなければいけないと考えています。外来種として問題となっているアライグマも、在来種との交雑が問題となっている外国産クワガタムシも、さらには毎年多くのイヌやネコが安楽死されている現状も元々は飼育放棄が原因です。旭山動物園としては、飼育下に戻す可能性のある限り、捕獲に向け努力を継続していきたいと考えています。
 
※8月下旬からの動き
 脱走したフラミンゴは、飛べたことで本来持っている本能や能力が働く状態になっていると思われます。つまり完全な野鳥だと考え捕獲方法を検討しています。前述までの捕獲作戦は飼育下にいた鳥との前提で考えていました。

 コムケでの捕獲方法として、他の野鳥の混獲をしない、コムケ湖の野鳥に極力影響を与えない、フラミンゴがコムケ湖を放棄してしまうような方法はとらないを前提としています。フラミンゴをエサなどを使いある一定の場所に寄せる方法の検討、こちらから近づく方法の検討を行いながら、夜間にコムケ湖に行き近づく方法の実験や、飼育下のフラミンゴでの給餌の実験を繰り返しています。現在のコムケ湖は珊瑚草が美しい季節を迎え多くの観光客が訪れています。観光客や地元の方への影響も考慮しなければいけません。

※今後のフラミンゴ
 捕獲できなかった場合、フラミンゴは本州ならばエサが確保できれば冬を越すことができますが、北海道のコムケ湖で冬を越すことはできないと考えられます。

 フラミンゴは身を守るための行動を決める指標としてアオサギと行動を共にしていますが、アオサギは10月中旬頃から南下を始めると考えられ、アオサギと共に南に渡る可能性があります。しかし南下する過程でコムケ湖のような生活のための条件がそろった環境は多くはありません。

 プランクトンなどエサが食べられる状態が続く限りアオサギとは行動を共にせずコムケ湖にいる可能性があります。この場合寒さや雪により衰弱し移動する体力すら残されない状態になることが考えられます。

 コムケ湖には、アオサギやカモ類を捕食するオジロワシが生息しています。捕食される危険は常にあります。

 寒さ、プランクトンの減少など何らかの理由で移動する可能性があります。いずれにせよ南下しようとすると考えられますが、どこかフラミンゴを飼育している場所に舞い降りる可能性があります。フラミンゴは個人でも愛玩鳥として飼育できるため動物園とは限りません。

※フラミンゴが飛べた理由
 動物園などで飼育している鳥類をオープンな形式で展示する場合、飛べないようにしなければいけません。
 その方法には手術より物理的に飛べなくする方法、生え替わる風切り羽根を切る仮切羽という方法、後は特殊な飼育形態ですが鷹匠の技術を応用しエサを使い飛んでも戻ってくるようにする方法などがあります。物理的な方法には翼の大きな風切り羽根が生えているヒトで言う指を切断する断翼術と翼(指)を伸ばせないように腱を切断してしまう断腱術があります。
 仮切羽は(フラミンゴの場合風切り羽根は毎年生え替わるのですが)片側の風切羽根を短く切り、左右のバランスを取れなくすることで飛べなくする方法です。ある程度は羽ばたくことでバランスが取れるので交尾行動は可能なため旭山動物園ではこの方法を採用しています(フラミンゴの場合断翼、断腱は全くバランスが取れなくなるため交尾行動が不可能となる)。
 旭山動物園で飼育している鳥類では、導入当初からモモイロペリカンとフラミンゴの一部に断翼されていた個体がいます。さらに「ととりの村」ができるまでの水禽舎で飼育されていたハクチョウやガンの中には当園で断腱処置をした個体がいます。

 フラミンゴに関してですが、冬期間は室内飼育ですから、夏期開園が始まる前に全羽、仮切羽をします。この時に羽根が伸び始めている個体、羽根が生え替わる寸前の個体もいるので、以降は毎日の放飼、収容作業の中で風切り羽根が伸びた個体を発見し、その都度切羽する方法をとってきました。
 あの個体に関しては、群れと共に移動する最中も羽ばたく行動がほとんど見られなかったため風切り羽根が生えそろった状態になっていました。
 自分の意志ではなく何らかの理由で羽ばたいて体が浮き、外周柵の外に出てしまい仲間のところに戻れない状態で発見されました。この時点では飛んで戻るという発想はフラミンゴにはなかったと思われます。職員が駆けつけ追いつめた結果、逃げようと羽ばたきながら走ったことで、結果として飛べてしまい逃走となってしまいました。

 現在は日常の観察に加え、月に一度全羽のチェックを行う体制を取っています。