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野生動物について考えてみましょう!

北海道の自然に

アライグマはいらない
アライグマの鋭い歯と強靱なあご 旭川で初捕獲となったアライグマ

北海道の自然にアライグマはいらない…

 2006年に入って、6月16日に旭山動物園のある旭川市、続いて7月7日にお隣の美瑛町で、アライグマが初めて捕獲されました。
 本来、アライグマは、北中米・カナダ原産で、日本には生息していませんでした。ところが、1977年にテレビで放映されたアニメで人気が高まり、ペットとして数多く輸入された個体が逃げ出したり、捨てられたりしたことで野生化しました。
 本州では、1962年愛知県犬山市で日本モンキーパークの飼育個体、北海道では、1979年恵庭市で飼育個体の逃亡が原因とされています。 北海道内の115市町村(64%)において、生息または目撃情報があります(2006年3月)。旭川も分布域とされていたのですが、実際に個体が捕獲されてみると、悲しい現実にショックを受けました。
 実は、旭川でアライグマを初めて捕獲したのは、当園の飼育員K氏です。彼は、元々動物の捕獲保定には目を見張るものがありましたが、まさかアライグマまで素○で捕まえてしまうとは…。最初に連絡を受けたときは、しばらくの間,驚くしかありませんでしたし、彼もこの上なく興奮しておりました。

 このアライグマのように元々その場所にいなかったのに、人間によって他の場所から連れて来られた生物のことを「外来生物」と言います。日本の野外に生息する海外から連れてこられた外来生物は、2,000種を超えると言われており、中でも生態系、人の生命・身体、農林水産業に悪影響を与えたり、与えるおそれのある侵略的な生物を特定外来生物として80種類が指定されています(2006年8月現在)。アライグマもその一種で、旭川市でもこの外来生物法に基づく防除を実施し、野外からの排除に積極的に取り組むことになりました。1953年に北海道庁が毛皮産業を推奨するために持ち込んで野生化したアメリカミンクについても同様です。

 それでは、なぜ北海道の自然にアライグマやミンクが野生化することがいけないのでしょうか?
 さまざまな生物によって構成されている自然の生態系は、長年かけてできあがったもので、一定のルールに基づいたバランスの上で成り立っています。そこに新たな生物が侵入してくると、その微妙なバランスが崩れ、元の自然が壊れたり、失われてしまうのです。また、農林水産業被害や病原体をもたらすことで人の健康被害を引き起こす可能性もあります。アライグマも被害者であり、罪はないのですが、命の重さは同じと言って放置しておくと、そこで平和に暮らしていた生きものたちを犠牲にすることになります。そして、新たに生き抜けたということはそれだけ強いということです。
 実際、アライグマは間違って報道されてしまうくらいタヌキに似ているのですが、その攻撃力はタヌキの何十倍ではないかと感じています。当園の飼育員がタヌキを素手で捕獲保定することは朝飯前?ですが、アライグマのときは血を流すこともあるくらいです。タヌキをはじめ在来の野生動物たちは、決してアライグマにかなうことはないでしょう。
 先に住んでいた生物たちの平和と秩序を守るためには、人間がこぼしてしまった汚れを自分で拭き取って、元通りきれいにする必要があります。捕獲したアライグマの運命について、飼育するとか原産国に返すなどの意見もありますが、その予算を確保したり、新たな生態系への影響を考えると殺処分が妥当な選択になります。このように数多くの動物の命が犠牲になっている現実を周知することで、さらなる外来生物の出現を未然に防ぎ、ペットの飼育規制や終生飼育につなげることが最も重要だと考えています。

 8月9日、旭川市と北海道上川支庁はアライグマフォーラムを開催し、市民へ事態の周知と対策への理解を求めました。旭山動物園からも「外来種アライグマの生態と在来種に及ぼす影響」として講演を行いました。これまでに、ニホンザリガニやエゾサンショウウオなどの希少在来種の捕食、アオサギの集団営巣放棄、フクロウ類の営巣巣の乗っ取り、およびタヌキ・キツネとの競合による消失などが報告されております。おそらく、アライグマが食べない生物を探す方が難しく、ありとあらゆる在来生物が捕食されたり、追い出されていることは間違いないと考えております。行政や声を出す住民は、生活に影響が及ぶと対策を実行するのですが、野生動物や生態系への影響を根拠としてはエネルギーをなかなか発揮できません。しかし、一度壊れ始めた自然を回復することはとても難しいことですから、対策は積極的に一刻も早く行わなければなりません。今回のアライグマフォーラムの試みは、旭川市を含む上川地域による画期的なアライグマ対策の始まりになることでしょう。みなさんに、ご理解とご協力をお願いします。ニホンザリガニ、リス、タヌキ、フクロウ…、身近にいる美しい野生生物を守るために、外来種対策のための予算化・組織化を!

 大雪山系、知床、釧路湿原…、北海道の大自然にアライグマはいりません…

 北海道以外でも、全国全世界でさまざまな外来種問題が起こっています。
 みなさんも身の回りの自然を大切に守るため、外来種について知り、考えてみましょう…


 飼育ニュース:外来生物展が始まります!(8/30)
          アライグマフォーラムで旭山動物園が外来種問題と生態系について訴える!(8/16)

 調査・研究:アライグマフォーラム 「外来種アライグマの生態と在来種に及ぼす影響」



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